ここでは皆様に寄せられた認知症に関する様々な疑問にお答えしています。

認知症とはアルツハイマー病のことですか?

認知症にはいくつかの種類があり、アルツハイマー病はその1つです。従って「認知症」=「アルツハイマー病」ではありませんが、認知症の6割はアルツハイマー病であるといわれており、大半を占めているのは事実です。その他に多いのが「脳血管性認知症」です。脳梗塞なので脳の血管の一部が損傷したことにより発症する認知症で全体の2割程度です。この「アルツハイマー型認知症」と「脳血管性認知症」は併発することがあり、この場合認知症の症状が一気に進むため注意が必要です。

主人が万引きをしてしまい警察沙汰になりました。普段の生活ではそんな兆候もなく、とてもショックを受けています。認知症の症状の中には万引きをしてしまうものもあると聞きましたが本当でしょうか。

認知症の一つに「ピック病」というものがあり、万引きはピック病の典型的な症状の1つです。また万引きに限らず人の敷地に勝手に入ったり、暴言を吐くなど反社会的な行動を取りがちです。 ピック病は前頭側頭葉変性症という認知症に分類され、この場合脳の前頭葉と側頭用が萎縮し理性的に物事を考えたり、相手のことを思いやる協調的な思考ができなくなります。 放置すれば状況が悪化するので、早めに医師の診断を受けて下さい。

母が死んだ父の姿が見えると言い出しました。すぐに認知症を疑いましたが、その他の判断力や記憶力は以前のままなのでとまどっています。これも認知症の一種なのでしょうか。

幻視が見えるのはレビー小体認知症の可能性があります。この場合、物忘れ等よりも先に幻視の症状が現れます。また、初期の頃は日常の判断力全般が衰えていないこともあります。 しかし幻視を見ている本人は非常にはっきりと見えているので、回りの人以上に本人が動揺しているのです。 このような時は幻視が見えていることをなるべく否定せず話を合わせるようにして下さい。虫が見えると言えば一緒に虫を追い払うようなしぐさをして挙げて下さい。レビー小体認知症については有効性が認められた薬が開発されているので病院などで医師の診断のもと投薬を受けて下さい。

単なる物忘れと認知症はどこが違うのでしょうか?

過去の内容の一部を覚えていないのが物忘れ、内容自体を丸ごと覚えていないのが認知症だと言われています。例えば買い物をお願いして、頼んだものを一部買い忘れてしまうのは物忘れと考えてよいでしょう。 しかし買い物をお願いしたこと自体を忘れてしまうのは認知症の可能性があります。

認知症は何が原因なのでしょうか?

認知症の原因はまだ研究段階のため特定するのは難しいところです。しかし様々な事例から認知症につながる可能性が高い生活習慣などはまとめられています。喫煙・肥満・睡眠不足・高血圧などで簡単にいうと若い頃不健康な生活を送った人は高齢期になってから認知症を発症する可能性が高くなります。 より正確に言えばアルツハイマー病の原因とされているアミロイドβは40代から脳にたまり始めるので、「不健康な生活をすると若い頃からアルツハイマー病の原因を蓄積している」と言えるでしょう。特に不健康さから脳梗塞も引き起こした場合は一気に症状が悪化するので注意が必要です。 アルツハイマー病については遺伝的な要因もあるとされていますが、まだ確定的なことは分かっていません。

認知症を治すことは可能なのでしょうか?

現代の医学では治る認知症と治らない認知症があります。脳血管性認知症のように血管の一部が損傷したことによる認知症はその部分が治ることにより認知症の症状改善も期待できます。 また正常圧水頭症といって脳内に水がたまることにより引き起こされる認知症もありますが、これは手術で大きく改善させることが可能です。 アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症のように脳の組織が変性したり、萎縮するタイプの認知症についてはその原因もまだ分かっていないこともあり治療方法は確立していません。
ただし薬でその症状を抑えたり、病気の進行をゆるやかにすることは可能です。

養父が数年前から認知症を発症し家事をしながら介護をしてきたのですが、最近は近所に私の悪口を言いふらすようになりショックを受けています。今後どのように対応したらよいでしょうか?

お嫁さんにとってはとても傷ついたと思いますが、身内にはひどい言葉を発し、外ではいい顔をするというのも認知症の典型的な症状の1つです。また「物盗られ妄想」などの被害妄想的な発想をすることもよく見られます。 このような場合は他の家族の方ともなるべく協力しあって下さい。ご主人には普段のお義父さんの様子を日頃から細かく伝え、理解を得るようにして下さい。また、お義父さんの話にはできるだけ反論しないようにしましょう。第三者的にはわがままなことを言っていても、認知症患者は真剣に考えている場合はほとんどです。易怒性(いどせい)といって怒り易くなる症状が出ていることもあるので、否定されると簡単にカッとしてしまいます。 辛いところとは思いますが、ご主人との協力で乗り切れるよう頑張って下さい。

父が認知症の症状を示し始めました。しかし自分ではそれを否定し、医者に行こうとしません。私としては一度医師の診察を受けさせたいのですがどうしたらよいでしょうか?

まずは「認知症は病気である」というお話をしましょう。 例えば風邪をひけば普通医者に行き診察を受けます。それと同じように認知症でも医師の診断を受けることが必要だということをゆっくりお話してみましょう。 年代が上の方は「認知症」がかつて「痴呆症」や「ぼけ老人」と呼ばれていた時期を経験しているので、自分が当事者になることを恥ずかしいと感じていることもあります。 病院に行くことに抵抗がある場合はケアマネージャーに相談することもお勧めです。「社会福祉協議会」もしくは「地域包括支援センター」に連絡すれば相談の予約を取る事ができ、内容によって介護施設や医療機関を紹介してもらえるでしょう。

アルツハイマー病は進行性の病気だと聞きました。「進行性」とはどういう意味でしょうか?

簡単にいうと「徐々に進行していき、前の状態には戻らない」という意味です。アルツハイマー病に限らず他の難病にも使われる言い方です。一時的に症状が収まったり進行がゆるやかになることはありますが、完治させる方法は見つかっていません。
だからと言って診察が無駄であるということではありません。放置すれば徘徊などの行動が出始め介護者の負担も増大します。アルツハイマー病の疑いがある場合は早めに医師の相談を受けましょう。

「認知症」と「痴呆症」は違うのでしょうか?

同じ物です。かつては「痴呆症」という名称のみが使われていました。ですがこの「痴呆」という言葉はもともと「ばか」「愚か者」という意味であり侮蔑的な言葉です。さらに「痴呆状態になった人はもう元に戻らない、何も分からない」といったイメージも持たれていました。 認知症を完治させることができないのは現在も変わりませんが、認知症患者が「何も分からなくなっている」というのは完全な間違いです。 何より「痴呆症」と呼ばれることを恥ずかしがり医師の診察を避ける傾向も見られ、これが放置につながり症状の悪化を招いていました。 そこで2004年に厚生労働省は「痴呆症」を「認知症」と改めるのが適切との報告を発表し、医療機関を始めとしてこの呼称が変更されました。

祖父に食事を出しても食べ終わった途端に「食事はまだか」と聞かれます。最近は面倒になって軽食を出そうと思っていますが問題はないでしょうか?

食事したこと自体を忘れてしまうのも認知症患者によく聞かれる話です。しかし本人が求めるままに何度も食事を提供していると栄養過多になってしまい別の危険性が出て来ます。まずは時計やメモなどを使って既に食事が終わっていることを伝えてみましょう。ここで納得してもらえれば成功です。うまくいかなければ1回ごとの食事の量を少なくし、1日に複数回食事の機会をもうけてもよいでしょう。

息子は50歳になったばかりですが若年性認知症の兆候を見せ始め、会社で仕事をする上で支障を来しているようです。まだ孫達も小さく仕事を辞める訳にはいかないのですがどうしたらよいでしょうか。

まずは症状を正確に見極めることが必要です。辛いところとは思いますが医師の診断を仰ぎましょう。仕事については会社によっては周囲の協力でサポートしてもらえるところもあります。しかし認知症が進行してしまうと本人の性格も変わり、協調的な面が失われる場合も多いので難しいところです。 現実的な手としては「介護認定」を受け、介護保険の適用を検討して下さい。自分より若い息子さんの介護認定を進めるのは気が重いかもしれませんが、介護施設などに入ればリハビリテーションを受けることもできます。早めの行動をお勧めします。

認知症は最後どのような状態になるのでしょうか?

認知症の途中過程は様々ですが、最後は全て寝たきりとなってしまいます。これは脳の機能が極端に低下し、基本的な動作も行えなくなってしまうからです。表情の変化も乏しくなり、会話もおぼつかなくなります。ですが最後まで患者さんに優しく接する姿勢は失わないで下さい。言葉に出せなくても、暖かいコミュニケーションは求め続けているからです。