認知症は、対策・予防法を理解出来れば怖い病気ではありません。
早期のうちから対処する事で予防や進行を防いだりする事が出来ます。
この項目では投薬やリハビリ、運動や食生活など具体的な予防方法や対処法をご紹介しています。予防のほか、家族や周りに認知症患者が居る方に向けた認知症患者との向き合い方の情報も提供しています。

認知症は予防や対策だけではなく、家族や周りに人たちの関わりも重要になってきます。
自分が認知症になったら、だけではなく、家族が認知症になった際の対策なども大切です。

認知症予防

認知症の予防や進行を遅らせるには様々な方法があります。 無理せず継続して出来るような、自分にあった方法を探しましょう。

①運動

運動は認知症予防に効果的であると考えられており、多くの科学的根拠(エビデンス)から裏付けられています。中でも「有酸素運動」がお勧めです。

有酸素運動は、運動強度はあまり高くないですが、継続して身体を動かし続ける運動のことを言います。代表的なものにウォーキングやジョギングが挙げられます。

他には水泳や踏み台昇降運動なども挙げられ、水泳の場合、泳ぐのが負担になる方は水の中を歩くだけでも構いません。

スポーツジムの施設などを利用できる場合はエアロバイクやトレッキングマシンもよいでしょう。

なお、有酸素運動であるウォーキングには松本熟年体育大学で開発された「インターバル速歩」という手法があります。速く歩く「さっさか歩き」とゆっくり歩く「ゆっくり歩き」を数分間ずつ交互に繰り返すことで筋力・持久力を無理なく向上させることができるうえ、骨密度の増加や生活習慣病リスクの改善などにも効果があります。
また1日トータル15分という手軽さも長く続けることが出来るポイントです。

<インターバル速歩>
http://www.jtrc.or.jp/interval/

認知症予防・対策の運動身体だけではなく、同時に頭を使うと更に効果的とされています。お勧めなのが、国立長寿医療研究センターが開発したコグニサイズと呼ばれる運動です。これは身体を動かしながら頭を使う問題を考える方法で、計算やしりとりなどたまに間違えてしまうくらいの難しさがよいでしょう。

<コグニサイズ>
http://www.ncgg.go.jp/cgss/department/cre/cognicise.html

例えばインターバル速歩をしながら「100から7を5回引く」という問題を考えます。このとき「100から7を5回引いたら100-7×5=100-35で答えは65!」としてはいけません。あくまでも1回ずつ計算し、93, 86, 79, 72, 65 と言葉に出しながら考えて行きます。 この少し難しい計算が脳にちょうどよい負担となります。

②生活習慣

生活習慣と認知症の因果関係はまだはっきりしていないものの、
悪因子とされる生活習慣がある人は無い人に比べ、認知症の発症率が2倍になることが
分かっています。 例を上げると下記のような項目になります。

・喫煙
・バランスの悪い食生活
・多量飲酒
・運動不足
・睡眠不足
・糖尿病
・高血圧
・肥満
・脳卒中

このような健康に悪影響を及ぼすと言われている習慣を若い時から繰り返すことで
認知症の原因が少しずつ蓄積されていくと考えられています。
たとえばアルツハイマー型認知症はアミロイドβタンパク質が脳にたまることが原因ですが、
発症が65歳の場合早い人では40歳頃からたまり初めており、
ここには本人の生活習慣が関係していると考えられています。

生活習慣は日頃の心がけで治すことができます。
認知症を避けるためにもぜひ健康的な生活を送りましょう。

③コミュニケーション/サークル

運動や生活習慣の他に、人間関係の持続も認知症の予防に非常に重要であると考えられています。

認知症になると「他者に対する興味が薄れる、無関心になる」という症状が見られますが、
これは脳の中の「社会脳」と呼ばれる部分が衰えるためと考えられています。

このような傾向は特に前頭側頭型認知症において顕著に見られます。
コミュニケーションに関する機能は脳の前頭葉や側頭葉が司っていると考えられており、
この病気にかかった人の脳を調べるとその前頭葉や側頭葉が萎縮していることが確認できます。

人間関係の持続、コミュニケーションを必要とする毎日を送ると、
この「社会脳」の部分が刺激され、衰えにくくなると考えられています。

「人間関係の広さが、認知症になるかどうかの分かれ目」とも言えるでしょう。
実際、退職後や伴侶を失ったあとに急速に認知症が発症したという例もあります。

家族や職場の人とのコミュニケーションはできるだけ続けるように心がけ、
コミュニケーションの中には時には小さな言い合いもあるかと思いますが、
それもまた脳に刺激を与えます。
(もちろん過度なストレスは脳に悪影響を与えるので気をつけましょう)

また、可能であれば社会人サークルなどに入って新しい人達と知り合うこともよいでしょう。

④脳トレ

運動不足になると、筋肉が衰える様に身体の機能は「使わないと衰える」ようになっています、
これを廃用症候群と言います。

脳の機能も同様に普段から電卓に頼って計算をしない生活を送っているとどんどん計算ができなくなります。 ですので、筋肉も脳も使い続け、鍛え続けることが大切です。
この時「年を取ってから訓練してもどうせよい結果にならない」などと考えるのは禁物です。
こうした後ろ向きな思い込みは訓練結果に悪影響を与えることが分かっています。

ここでは比較的すぐに取り組めるかんたんな脳トレをご紹介します。
取り組む時は、ご自身の脳が活発に、 そしていきいきと活動しているイメージを持って
のぞんで下さい、それがよい結果につながります。

<思い出トレーニング>

今日の曜日や年号・西暦を答えてみましょう。
簡単なようなことでもこれは見当識能力のチェックにもなります。問題なく答えられるようでしたら様々なイラストを見て物の名前がスムーズに答えられるか確認してみましょう。

<しりとり>

認知症患者に限らず、年を取るといざという時に言葉が出なくなる経験をしたことはありませんか?
しりとりはこうした「言葉の忘れ」を補う訓練になります。慣れて来たら「地名だけでしりとりする」「果物の名前だけでしりとりする」などルールにしばりを入れてみましょう。

<パズル>

クロスワードパズルや数独などに挑戦してみましょう。鉛筆で自分が正解と思う答えを書いたり消したりする過程がトレーニングになります。

<計算>

普段から電卓に頼って計算をしない生活をしていませんか?
ごく簡単な問題でよいので鉛筆を使って計算練習に挑戦してみましょう。

また、普段の買い物においてもなるべくお釣りの計算をしたり、小銭を合計して支払う計算を行うようにしましょう。
認知症患者の中にはお釣りの計算ができずサイフに小銭を貯めてしまう人がよく見られます、お財布の中の小銭のバランスを考えることも認知症予防の一つになります。

<読み書き>

「読む」という能力は発声能力を鍛え、口腔機能の強化になります。この口全般の力を維持することは非常に重要で、ここが衰えると食事をする機能が衰え、最終的には死につながります。
「書く」ということは指先の運動にもなります。文章だけでなく図形も書く練習をしてみましょう。

<ボードゲーム>

ボードゲームは小さなルールを覚え実行する訓練の連続です。また、対戦相手とのコミュニケーションを図る訓練にもなります。
麻雀・囲碁・将棋・オセロ・トランプなど昔からよく知られたもので構いません、ゲームによっては単純にルールを覚えることよりも、相手の表情を読むことの方が重要な場合もあるでしょう。こうしたやり取りが脳によい刺激を与えます。

<折り紙>

折り紙は手先の訓練だけでなく、計画を持って一つの作業を行う実行機能の訓練になります。まずは「紙を2つの長方形に折る」「紙を2つの三角形に折る」といった簡単なところから初めて見ましょう。協力してくれる人がいるならくす玉など多数のパーツが必要な作品を一緒に作ることもよいトレーニングになります。

さらなるクイズ
上記以外にも脳トレとなる様々なクイズがあります。
一例として下記の製品には11種類の脳トレが収録されており、楽しく取り組むことができます。
▶いきいき脳楽エイジング

脳トレでは単純に脳機能を高めること以外に「達成感」を得ることが大切な要素です。難しいと思った問題が解けた、ゲームに勝てた、手間をかけた作品ができた、といった経験をした時脳の中には「ドーパミン」と呼ばれる物質が分泌されます。
これは私たちの意欲の根源となるもので、生活の様々な場面において前向きな気持ちを維持する要因となり、楽しく暮らすための重要なポイントとなります。こうした「楽しい」という気持ちも脳の健康を保つ上でとても役立ちます。

認知症対策/進行をゆるやかにする

認知症になってしまった、認知症になってしまったかもしれない、という場合は、慌てずに適切な機関等に相談したり、これ以上進行させないための対策を練りましょう。

① 診察

認知症を疑う場合、まず何科を受診すればよいか迷うかもしれませんが、「精神科」「神経科」「神経内科」「老年病内科」「老年内科」などがよいでしょう。
また最近では「もの忘れ外来」という専門外来も増えて来ています。

ここでは物忘れの自覚がある人に対してそれが認知症によるものなのかを診断します。
お近くの病院で「もの忘れ外来」がないか確認してみましょう。

診察にあたってはまずは日常生活の様子から確認させて頂き、
次に記憶力のテストや図形を書くテスト、現在の日付や時間を確認するテストなどを行います。

これらの情報や結果をもとに医師が認知症かどうかの判断を行い、
場合によってはCTやMRIなど脳の画像診断も行います。

② 薬

認知症全体の原因はまだ明らかになっていないものの、
アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症については有効性が認められる薬が開発されています。服用方法も錠剤、ゼリー、粉末と数種類が用意されており、高齢の方でも簡単に頓服出来るようになっています。ただし服用に関しては副作用の見極めも重要なため医師の診察に従って下さい。

③ ケアマネージャー

ケアマネジャー(介護支援専門員)とは、介護が必要な人に適切な介護をコーディネートする職業で、通常は「社会福祉協議会」もしくは「地域包括支援センター」に所属しています。

認知症の疑いがある場合はこの2つの団体のうちのどちらかに連絡し、ケアマネージャーとの面談を進めて下さい。

現在の症状などを確認した後、必要な介護施設への連絡などを行います。
また、要支援もしくは要介護の段階を判定します。(要支援は2段階、要介護は5段階に分かれています) 症状によっては医師の診察を進められることもあります。

④ リハビリテーション

リハビリテーション(以下、リハビリ)の目的は身体機能の回復と達成感や充実感の獲得の2つがあります。

前者の身体機能の回復については認知症の性質上発症前と同じ状態に戻すのは
難しいのが現状です。ですが後者の達成感や充実感の獲得は十分に可能であり、
これにより脳の活性化を図ることもできます。

認知症に役立つリハビリは幅が広く、散歩なども方法によってはリハビリになります。
簡単なことのようですが認知症患者の中には自分の家への帰り道も分からなくなってしまう人も多く、時としてこれが徘徊につながります。従ってリハビリで散歩を行う場合は毎回同じ道を歩くのではなく少しずつ行く先を変え、道順を変えるトレーニングも組み込むのがよいでしょう。

他に代表的なリハビリとしては下記のようなものが挙げられます。

回想法/昔の写真を見ながら当時のことを思い起こし、説明します。

作業療法/料理や洗濯など認知症患者に可能な範囲で家庭の仕事に参加してもらいます。
これには「自分が家族の役に立っている」という充実感を感じてもらう意味もあります。

音楽療法/ただ音楽を聞くだけでなく、身体を揺らせたり手を叩くなどの動作を行うことが大切です。患者が好きな曲、思い入れのある曲を使いましょう。特に患者が楽器を演奏できる場合はその演奏を聴いてもらい評価を得ることで脳の活性化につながります

美術療法/作品をつくることで指先や計画能力の訓練を行います。
塗り絵、粘土細工、折り紙などがよいでしょう。一緒にこのリハビリテーションに参加できる人がいる場合は、出来上がった作品をお互いに評価してみましょう。

レクリエーション/心を楽しませることも広い意味での脳の活性化につながります。
施設に入っている場合や、親しい友人が居る方は入所者、友人とともに寺社巡りやカラオケにでかけてみましょう。

行政がこのような企画を行っている場合もあるので調べてみましょう。 リハビリはご自宅でできるもの多くあります。施設や作業療法士に頼らず、積極的に毎日の生活に取り入れてみて下さい。

⑤ カフェ

認知症の方は発症後外出を面倒に感じ家に閉じこもる傾向がありますが、そのままにしておくと運動不足やコミュニケーション不足になっていきます。

本人もどこに出かけたらよいか分からず、家族もどこに連れて行ったらよいか分からないので状況は変わらないままでした。

認知症患者は自分の症状に対する悩みや不安を感じていてもそれを話せる相手が
なかなか見つかりません。
相手が健常者ですと「自分の状況を分かってもらえないのではないか」「話すこと自体が恥ずかしい」と感じるからです。これは認知症患者を介護する家族に関しても同様です。

このような悩みに対する一助として「認知症カフェ」というものが登場しました。
認知症患者とその家族が集まり、語り合いの場となっています。

集まる人は認知症の人とその家族、専門家、地域住民などです。
交流や情報交換が主な目的で、レンタルスペースなどを借りて定期開催する場合がほとんど。
参加費は数百円から2,000円程度です。

認知症カフェは同じような状況の人が集まるため話しやすい環境が生まれます。
また、カフェでは認知症の人がコーヒーや軽食をふるまうことがありますが、
これは役割を持ってもらうことで自分の存在意義を確認してもらうのが狙いです。

認知症カフェには医療従事者やケアマネージャーなどが訪問することも多いので、
ここで専門家の意見を聞くこともできます。

認知症カフェを探す場合は「認知症カフェ」とお住まいの地域名(市町村名)を組み合わせて
検索して下さい。行政のホームページなどで紹介されていることもあります。

既に認知症が発症してしまった場合でもそれに対する適切な対処を行うことで本人や周りの家族、介護者の負担もとても軽くなります。
諦めるのではなく、前向きに認知症と向き合うことが大切です。

認知症患者の介護

認知症は本人だけの問題ではなく、家族や周囲の関わり方も重要です。ここでは認知症患者を家族に持つ人を対象にした情報を掲載しています。

1) 家族会

進行が進んだ認知症患者の介護負担は並大抵ではありません。
時間的、経済的負担も重なる上に時には患者から暴言を吐かれることもあり心理的にもかなりの疲労が積み重なります。 しかし家族の問題ゆえになかなかその悩みを第三者に打ち明けづらい場合がほとんどです。

こうした問題に応えるため、全国で認知症患者家族会が開催されています。
会の名称は地域により異なりますが、「認知症患者+家族会+(お住まいの地域名)」で検索すれば
最寄りの家族会を見つけることができます。

地域によってはアルツハイマー型認知症を対象とした家族会、レビー小体型認知症を対象とした家族会など病気によって細分化された家族会が設立されているので、より細かい情報を交換できるでしょう。

2) ユマニチュード

ユマニチュードとはフランスで生まれた認知症のケア手法です。認知症が進むと患者は回りの人への興味関心を失ったようになります。そうかと思うと暴言を吐いたり、介護を拒否するような態度を見せることもあり、介護する側はこれも症状の一つかと頭では分かっていても人格の変貌ぶりにショックを受け、 時には自分も言動を荒げてしまいます。これでは患者との関係性は悪化する一方です。

ユマニチュードはこのような状況を変えるケア手法です。
特別な治療や機械を使うわけではなく、150種類への患者への対応メソッドから構成されています。

今までコミュニケーションを取れなかった認知症患者ともユマニチュードを通してやり取りすることで関係性を回復できることが多々あります。

ユマニチュードはイブ・ジネストさんとロゼット・マレスコッティさんという2人のフランス人によって作り上げられました。「見る」・「話す」・「触れる」・「立つ」というコミュニケーションの4つの柱を基本としています。

「見る」ではアイコンタクトを重視し、介護する側が認知症患者と目を合わせてから会話を始めることとしています。

「話す」では常に患者に対して前向きな言葉をかけることとしています。これは反応が返って来ない患者に対しても同様です。

「触れる」では患者の背中や手を優しく包み込むように触れることとしています。実際の介護現場では忙しくて患者に無言で触れてしまうことが起こりがちなのですが、これは厳禁とされています。

「立つ」では患者が1日20分は立てることを目指しています。立つ能力が健康維持につながるだけでなく、「自分の足で立つことが人の尊厳を自覚する」ことにつながるからです。

下記の動画ではイブ・ジネストさんが日本の介護現場でユマニチュードを実践している様子を見ることができます。患者とコミュニケーションを取り始めてからすぐに効果が表れ、その早さに驚きます。
https://www.youtube.com/watch?v=C4j_BCKDzrQ

家族や介護者が抱え込まずにオープンに対応していくことで、患者と良い関係性を築いたり精神的負担を軽くする事が出来ます。予防、対策、ケアを複合的に見て、どれが一番自身に合っているか今一度考えてみましょう。